優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2012年01月

□◆□…優嵐歳時記(2796)…□◆□ 

  蟷螂の卵いくつも寒の枝   優嵐

今日は大寒です。昨日は比較的暖かく、中綿入りのジャケットを着て山道を歩いていると汗ばんできました。梅林の梅の蕾はどんどん膨らんでいます。その枝を見ていたら、あちこちにカマキリが産みつけている卵が目につきました。葉があるときは気づきませんでした。蕾も卵も春を待っています。

昨日、Apple社が教科書用のツールを発表したという記事を読みました。去年の春、電車の中で雑誌や新聞、書籍を読んでいる人がほとんどいないのに気がついたことを思い出します。紙の出版物は近い将来消えると実感しました。この記事を読み、想像以上に早くその時代はやってくるかもしれない、と思いました。こういう分野は動き出すとあっという間です。

今は生まれたときからネットがある環境に育った人とそうでない人が共存している時代です。子どものときからネットとともに育った人にとっては、ウェブをはじめとするデジタル関連サービスは母国語のようなものです。スマートフォンが進化して、いつでもどこでもネットに接続できる世の中が実現しようとしています。ネットはもう電気や水道と同じ生活のインフラといえます。

学校環境の中でこうしたツールが身近になることは、単に紙が消えるだけでなく、現在のようなハードウェアとしての学校が消える可能性もありえる、ということです。今の学校という仕組みは、人々を一箇所に集めて一斉に働かせる近代工業社会の要請にあわせて誕生しました。ベルとともに大勢の人間が一斉に同じ活動をします。それ以前の社会では、人々はそんなことをする必要はありませんでした。

今、働き方はどんどん変わっています。iPadで動くこの教育ツールを見たら、黒板も教壇もいらなくなるんじゃないか、と思いました。大勢が教室に詰め込まれる必要もありません。通学する必要もなくなります。そうすると、登校拒否という問題も消えますね。教師がいらなくなるという意味ではありません。どんなにネット関連の技術が進んでも、道具はあくまで道具です。しかし、教師が今までとはかなり異なる方法でアプローチしなければならなくなるのは確かでしょう。

もし、ハードウェアとしての学校がなくなったら、子どもはどこで社会性を身につけるのか、ということになるかもしれません。しかし、学校がない時代から人々はずっと社会性を身に着けてきたのだから、方法や手段が変化するだけでしょう。それに現在の社会性というのは、ネットが無かった時代とは変わってきています。今、子ども(大人も)が覚えるべきルールのひとつがネット環境でどうふるまうかということです。個人情報を守るにはどうすればいいのか、SNSでの発言をどうすべきか、オンライントラッキングにどう対処するのか、そういうネット以前には考えられなかったような課題が新たに生まれています。

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□◆□…優嵐歳時記(2795)…□◆□    
  
  田に畑に降りしきるなり寒の雨    優嵐

朝、窓を開けてみると路面が濡れていました。そのまま静かな雨の一日になりました。今年に入って初めての雨らしい雨です。何かほっとするような感覚があります。散歩にも行かず、部屋にこもっていました。荷物が届いたので、その点は好都合でした。たまにこういう冬篭りの日があってもいいものです。

EVERNOTEを使い始めました。半年以上前にアカウントはとっていたのですが、どう使っていいかわからず放置していました。しかし、こういう便利な道具は使いながら使い方を覚えていくのが一番手っ取り早いでしょう。使っていれば自分なりの使い方を見つけると思います。

IMG_2646<好み>
紙に万年筆で線描する感覚を楽しんでいる
指と腕に負担がかからない
もしかしたら
塗ることよりも
線で描くことの方が好きかもしれない

□◆□…優嵐歳時記(2794)…□◆□

  寒ぬくし頂に人と談笑す   優嵐

明後日が大寒です。昨日は風がほとんどなく、暖かな一日でした。寒中とは思えない陽気で、播磨灘は霞んでいました。暖かいと気分がゆったりします。梅林はまわりを森と竹林に囲まれていてもともとあまり風はあたりません。しかし、昨日は風に敏感な竹林さえほとんど動かず無風状態でした。

肘のサポーターを買ってきました。つけてみると、肘がしっかりしまった感じで快適です。絵は肘や指に負担がかからない方法で描いていますが、それでもサポーターをつけてまた少しよくなった気がします。ゲルマーカーがホワイトスピリットに溶けるのを発見してうれしくなりました。これでゲルマーカーとクレオロールを併用しつつ、ホワイトスピリットで溶かして描くことができます。

IMG_2644<あとのまつり>
世の中で一番恐ろしいことは
「思い込み」である
あらゆるケアレスミス
大惨事の発端は「思い込み」にある

大丈夫だろう
こうに違いない

ところが実際は
全く違うことが進行している
それに気がついてあわてるのを
「あとのまつり」という


□◆□…優嵐歳時記(2793)…□◆□

  冬帽子被りいつもの散歩道   優嵐

帽子は日よけになると同時に、保温にも役立ちます。頭から逃げる熱量というのは意外に多いのです。また、アウトドアで活動するときはケガを防ぐ役割もします。最近、午後になると雲がでることも多いのですが、雨は全く降りません。今年になってから雨らしい雨は降っておらず、そろそろまとまった雨が欲しいところです。

いま、数種類の水彩紙のスケッチブックを買い、使い心地を試しています。紙によって随分絵の感じも変わるものだ、と今ごろ感心しています。水彩紙はいずれも表面に腰があり、鉛筆で描いても画用紙とは違う感覚が返ってきます。それぞれの紙に個性があり、何を描くかによって使い分けるのも面白いかもしれない、と思っています。

IMG_2638<簡潔に>
俳句のような絵を描きたい
けれど
俳画という意味ではない

省略が効いて
ツボがおさえられていて
力が抜けていて
シンプルでスマートな絵

削り落とすことを覚えなくては


□◆□…優嵐歳時記(2792)…□◆□  

  早梅のしべ震わせて風過ぎる  優嵐

「早梅」とは、まだ春にならないうちに咲き始める梅を意味します。増位山梅林で、早咲きの紅梅が咲き始めています。「そろそろかな」と思いながら木の近くに寄って見てまわっていると、蕾が赤ん坊のこぶしのように膨らんでいるのがわかります。思いがけず一輪が花を開いており、うれしくなりました。水仙も蝋梅も春の接近を告げていますが、やはり梅は格別です。春の使者、早春の息吹を伝える花です。

日曜日、アートワークのあと新年会としてカラオケに行きました。最後にカラオケに行ったのはいつだったか、仕事を変わる以前ですから、6年はたっていると思います。カラオケ機器の進化に驚きました。選曲はすべて手元のタッチパネルで操作します。有名な曲は何パターンものバージョンがあり、キーを変えることも簡単にできます。久しぶりに歌ってやはり歌うのは楽しいものだと思いました。

IMG_2634<遊びをせんとや>
歌ったり踊ったり
走ったり跳んだり
子どもが大好きなことは
大人だってやっぱり好きなのだ

動物も子どものときは遊びが好き
しかし
大人になっても遊びが大好きで
死ぬまで遊びを忘れないのは人間
もっともっと遊ぼう
それが人間らしいということだから

□◆□…優嵐歳時記(2791)…□◆□  

  寒暁や列車の音に明けてくる    優嵐

アートワークのために大阪へ行っていました。一月から三月までの三ヶ月間は参加者のひとりがファシリテーターとなって他の参加者にワークを提供する一種の実習をやります。午前中は前回のワークから今日までの振り返りをおこないました。

アートワークに参加するようになってから、「自分の身のまわりで起きる出来事、身の上にふりかかってくることのすべては、自分に何かを示唆している」と考えて生きるのが賢明である、と実感するようになりました。さらに、コントロールしようとせず、ものごとの観察者であり続けること、受け入れることの大切さがじわじわと理解できるようになってきています。

今自分にとって何かを示唆されていると思えるのは腕の不調です。以前の私であるならば、こういう不都合なことに出会うと腹をたて、苛立ったものでした。しかし、今はこの腕の不調が自分に何を教えようとしてくれているのか、を考えています。

物事を勢いに任せて強引に進めていくことはもうやめた方がいいよ、と言われていることがひとつはあるだろう、と思っています。それは絵を描くということだけでなく、あらゆる物事に対する自分の姿勢も含めての話です。それと同時に悪いことばかりでもない、とも思っています。腕の調子が悪くなったから絵の描き方について新しい方法を試そうとしています。もし腕や指の不調がなければ絵は変わらなかったでしょう。

自分の身の回りに常にサインは出ており、肝心なのはこちらにその兆しを読み取ったり、声を聞いたりする心構えがあるかどうかです。自分に不都合なことがあると、人は「こうあるべきだ」とか「こんなのは嫌だ」とかいう気持ちでいっぱいになり、貴重な示唆を逃してしまいます。

こういうことを感じるようになってから、「占い」というのは、こうしたサインを何らかの形で実感するために考え出された手段なのではないかと思うようになりました。吉凶を見るというよりも、自分は何を見せられているのか、を考えるきっかけにするのです。もし、自分自身でサインが読み取れるようになるならば、「占い」という手段を用いることなく自分の耳をすませばいいのです。

真摯にその声を聞くためには、こちらの内側に余分なフィルターがかかっていないことが大事です。「判断をしない」というのはそういうことでしょう。

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□◆□…優嵐歳時記(2790)…□◆□

   底冷えの書写山上の大伽藍     優嵐 

書写山に登って来ました。登山の詳細については、こちらをご覧ください。お天気はくもりがちでしたが、日差しもときおりありました。古い遍路道をたどっての登山はなかなかおもむきのあるものでした。

山を降りた後、「天然温泉 姫路市交流センターゆたりん」へ行きました。いつも山へ行ったあとはどこかの立ち寄り湯へ行きます。しかし、昨日はちょっと特別な感じを持ちました。ここは天然温泉なのです。源泉のお湯につかることができ、そこの湯温もなかなか快適でゆったり入っていました。そして、気がついたのですが、腕の調子がいいのです。

以前、雪彦山で会ったかなり登山のエキスパートと思われる女性が、天然温泉のよさを口にされていたことを思い出しました。彼女は山で膝をケガした後、姫路市休養センター香寺荘「竹取の湯」へ通い、膝がすっかりよくなったといいます。私は今までそういう経験が幸いにして無かったのですが、昨日の経験で天然温泉というのはやはり素晴らしい効能を持つものらしいと認識しました。

IMG_2616<湯治>
温泉を出てしばらくして
腕を気にしていないことに気づいた

完璧に元通りというわけではない
しかし感覚的な重しがとれている

温泉には確かに癒す効果がある
それは単に気のせいなんかじゃない
人間の心身の「治る」という仕組みは
とても精妙不可思議なものではあるまいか


□◆□…優嵐歳時記(2789)…□◆□  

  待春の木々青空に枝広げ   優嵐

気温が低い一日でしたが、よく晴れて光の明るさをはっきり感じました。寒に入って今日は九日目、「寒九(かんく)」という季語になっています。なんだか艱難辛苦の略語のようですね。「待春(たいしゅん)」は冬のさなかで春を待つ心です。北国の方であればその心持はいっそう強いものがあるでしょう。日ごと明るくなる光に近づく春を思う、これもいいものです。

昨日、地球の美しい動画を見ました。SS-HDTV(超高感度ハイビジョンカメラシステム)を使って国際宇宙ステーションから撮影された映像をもとにした作品です。映像のクオリティが高いので、可能な方は全画面表示にしてご覧になることをお勧めします。私は新しく購入したレッツノート15.6型のフルHD画面で見ました。地球の幻想的ともいえる姿に触れられます。大きな画面であればあるほど、実感に近づくのではないかと感じます。

IMG_2613<旅するものよ>
緑色に輝きながら流れていくオーロラ
地球の鼓動のように光る雷

光の川に見えるのは
人々が暮らしている場所

それらを乗せて宇宙空間を旅する地球
その表面を覆う薄い膜

この皮一枚ほどの中で
私たちすべての生き物が暮らしている

□◆□…優嵐歳時記(2788)…□◆□

  寒中の沖はまぶしく晴れており  優嵐

寒波がきています。昨日は真昼の外気温が5度と寒く、午後は部屋にいても冷えているのがわかりました。最近どこへいっても、HPやブログにTwitterやFacebookのロゴがついたボタンが設置されています。使ったことはありませんが、「つぶやく」ためのものなんだろう、とは想像がつきます。

その中で「はてなブックマーク」は不思議でした。これ、いったいどう使うのだろうと思って検索すると、新着エントリーというページが便利らしいことがわかりました。1000以上のブックマークがついた記事だそうです。ここをさらっと見出しだけでもみると面白い、とあり、ふーんと数日前から眺めています。昨日、『困難な時代を生きる君たちへ(内田樹研究室)』という記事に目がとまりました。これを読んで、そうだよなあと納得しました。

内田さんは中高生に対し、こう言っています。---そういう時代にみなさんはどう生きればいいのでしょう。私に言えるのは一つだけです。どんな学問や仕事を選ぶにしても「努力することそれ自体が楽しい」ことを基準にして下さい。(中略)みなさんも「それが何の役に立つのかわからないけれど、どうしてもやりたい、やっていると楽しい」ことをみつけてください。そうすれば、「努力したけれど報われなかった」という言葉だけは口にしないで済むはずです。---

はてなブックマークの新着エントリーというのは、一種のまとめサイトなのだと解釈しました。その昔、インターネットが離陸し始めたころには、人がサイトを見て格付けをしていくタイプの検索が主流でした。ところが情報が膨大になり、Googleのようなロボットを使った検索サイトが優勢になりました。しかし、このごろは再び人が判断して情報をまとめる”まとめサイト”というものが盛んになっています。そのうちまとめサイトのロボット検索なんていうのが出てくるかもしれません。

IMG_2428<蛇行>
あらゆるものはまっすぐには進まない
もっとも理にかなった進み方は
蛇行

蛇はもちろん
人間の歩行も右に左に揺れつつ進む
振れ幅は必要不可欠


□◆□…優嵐歳時記(2787)…□◆□

  山路ゆく春遠からじと思いつつ   優嵐

年が明けて山を歩いていると、春の兆しを感じるようになりました。まず日差しの具合が違います。さらに完全に落葉が終わっているために森の中は明るく、裸の枝の冬芽が目につきます。梅林までおりてくると、梅の芽は確実に開花が近いことを感じさせる膨らみ具合です。

クレオロールを生産しているパイロットは、同様の製品で水性のゲルマーカーも発売しています。これも使ってみようと思います。クレオロールの軽やかさに気づいた後、クレパスで塗ろうとしたら、その摩擦係数の大きさに驚きました。以前は全くそういうことに気づかなかった、というより、この摩擦感覚を楽しんでいました。ぐいぐい描くその「運動」といっていいような感覚が気持ちよかったのです。ところが、腕の調子が悪くなると、それが負担です。

ゲルマーカーは発色が鮮やかなようですし、クレオロールよりも見たところ太く、広い面積を塗るには適しているのではないかと思いました。ホワイトスピリットの代わりに水を使えばぼかすこともできるかもしれません。この辺は実際に手にして使ってみないとわかりませんが。

IMG_2607<脱力系>
適切なときに力を抜くことのできる人が
真の達人だという

突っ張っていると自分が折れる
ゆるやかにやわらかに
風や水のように

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