優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2012年02月

強東風
強東風は「つよごち」と読みます。昨日、増位山の頂から南の播磨灘を眺めていて沿岸部の煙突の煙の流れる方向が冬とは逆になっていることに気づきました。冬は北西の季節風のため、煙は姫路から神戸大阪方面に向かって流れます。昨日は岡山方面に向かって流れていました。東風です。気温は低かったのですが、風の向きに確かに春と感じました。

空模様が一日の間にも微妙に変わり、ぼんやり曇ったようなお天気が増えたのも春らしいことです。最近、また図書館へよく行くようになりました。図書館のよさというのは、新刊書でも実にいろいろなものが並んでいることです。書店では大都会の巨大な書店でもない限り、並んでいる本はだいたい似たようなものです。

しかし、図書館ではベストセラー的なものは入ってもすぐに借りられて、そこに落ち着くのはかなり先です。逆に新刊書であまり書店では見ることがない類のものが並んでいます。その中からふいと手にとってなんとなく本が呼ぶようなものを借りてくるようにしています。こういう感じで選んで、意外におもしろい本に出会うことも多いのです。

IMG_2806<物語を生きる>
ぼくらは事実を生きているのではない
事実と物語によって織りあげられた
時空を生きている

だから「物語」によって
きみの人生はいろいろな色と形を持つ
まるで万華鏡のように

ちょっと傾ければ
さっきまでそこにあった形が
まったく異なるものになる

料峭
料峭(りょうしょう)とは、春風を肌に寒く感じることです。昨日の午前中は晴天で光がまぶしく感じられました。それでも気温は比較的低く風がありました。森を歩くとその風で常緑樹の葉が揺れ、光が足元で翻ります。そのきらきらとした様子に春がまた進んだことを知りました。

増位山のドライブウェイの谷には梅や桜が植えられています。ドライブウェイといっても通る車は少なく、ウォーキングやジョギングをする人をよく見かけます。私はアスファルトの坂道を歩くのは好きではないので、車で山上の駐車場まで行きます。紅梅が咲き出して、歩きながら谷を覗き込んでいる人の姿を見るようになりました。梅の次は桜、そしてツツジです。

IMG_2811<見るということ>
絵を描くと
自分が今まで見ていなかったことに気づく

見たつもりわかっているつもり
目の前にあったもの
見慣れているはずのものが
描いてみると違う姿をあらわす


きさらぎ
「きさらぎ」は如月、旧暦の二月のことです。新暦の三月にほぼ重なることが多いようです。新暦のカレンダーに二月を意味して「如月」と書いてあるものがありますが、これはちょっと違います。暦からしても季節感からしてもおかしくなります。今日は旧暦では二月六日です。少し暖かくなった感じがありましたが、日曜はまた気温が下がりました。三月上旬はまだ寒い日もありそうです。

坂井泉水さんの月命日です。今回の絵は単行本『きっと忘れない』の口絵写真をもとにしました。あまり表情がはっきりしないものですが、こういう写真の方が彼女らしいと感じるようになりました。こういう写真を選んで描いていくと、また違う面白さがあります。

<書く>
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マーメイド水彩紙 186g(厚口) 中目SM(228×160mm)、万年筆PARKER SONNET(M)&プラチナ顔料ブラック、PILOTゲルマーカー&クレオロール

最近、絵を描くことで考えているのは、描きすぎないようにしよう、ということです。めりはりがついていて、さらに絵から力がぬけているような画面を作りたいのですが、なかなかそういうことはできません。力をぬくというのはほんとうに難しいことなのだと思います。



□◆□…優嵐歳時記(2832)…□◆□ 

  春雨や図書館で選ぶ本五冊   優嵐

お天気がめまぐるしく変わるようになってきました。「春眠暁を覚えず」という言葉があります。最近、睡眠時間が長く、八時間から九時間くらい眠っています。理由はよくわかりませんが、身体が要求するので、それに逆らわないのがいいだろうと思っています。

図書館で『ディープピープル 青』という本を借りてきました。NHKの同名の番組を書籍化したものです。内容は、世界王者レベルのスポーツ選手三人に集まって「深い」話、を語ってもらったということのようです。ディープピープルというのはきっと「ディープパープル」のもじりだろう、と思います。こういうネーミングができる日本語の「深さ」も好きです。

この本では、ボクシング、柔道、競泳の背泳という三つの競技が取り上げられていて、それぞれ深い話が語られていました。最初のふたつは格闘技ですから、種目は違っても似た部分が多いと思いました。意外にもボクシングも柔道もほんとうに切れ味鋭いパンチや技が決まったときというのは、「力」をほとんど感じないようです。

さらに三つの競技に共通していたのは、力まないのが大事ということでした。力みというのは、よくきく言葉です。誰もが、何かをうまくやりたい、素晴らしい結果を出したい、がんばりたい、と思ったときなぜか力んでしまいます。人間とはそういう反応パターンという鋳型にはまっている生き物のように思います。その鋳型を脱することができたら、多分凄いことができるのです。

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□◆□…優嵐歳時記(2831)…□◆□ 

  せせらぎの音を近くに梅開く   優嵐

木曜日に雨があがったあとから気温が高くなり、梅の開花が進んでいます。増位山のドライブウェイでは、南の日あたりのいいところの梅が五分咲きくらいになっています。梅林はまだ紅梅がちらほら咲いている程度ですが、三月の声を聞くとさすがに一気に開きそうです。あと一ヶ月もすれば桜が咲き始めます。

最近、タイムラプス(インターバル)撮影の技術を駆使して作られた動画をよく見ます。ほとんどが自然の動き、天空の星や月、雲や水の流れをとらえたものです。その美しさと壮大さには息をのみます。昨日もそれを特集したページを見ました。動画制作に要した時間と労力はたいへんなものだと思います。これらを見ていると、どこか敬虔な気持ちになります。

IMG_2795<感受性>
人の感覚は限られている
私たちは速過ぎるものも
ゆっくりすぎるものも
とらえることはできない

ハチドリの羽ばたきは速過ぎ
地球の自転で星が動くのはゆっくりすぎる
見える色、聞こえる音の波長も限られている

特殊な機械を使って
これらのものを感じることは可能になった
それでも機械のさらに先にずっと広い世界がある

□◆□…優嵐歳時記(2830)…□◆□

  雨あがる春の山路に人と会う   優嵐

水曜日の夕方から降りはじめた雨が、木曜のお昼ごろにはやみました。その後、気温があがり、午後三時ごろの外気温は15℃ありました。ひと雨ごとに暖かくなっていくというのを肌で感じています。雨があがったのを見計らって山へ散歩に行きました。こうして毎日のように歩いていると顔見知りの方が何人かできます。名前もなにもお互いしならくても顔を見れば挨拶を交わし、暑いですね、寒いですねと言葉を交わしあいます。

来週の木曜はもう三月。今年はうるう年で29日があるものの、それでもやはり二月は「二月早や」です。「一日を捕らえよ二月逃げやすき/堀田幸嗣」という句が歳時記に載っています。まことにその通り。まあ、考えてみれば一生がそういえるわけで、「一日を捕らえよ人生逃げやすき」と言い換えられるかもしれません。

IMG_2788<達人>
すべてに時がある
待つべき時には待ち
決断すべき時には決断する
それができたら達人

とかく人は
待つべきでない時に待ち
待つべき時に待てず
決断すべきでない時に決断し
決断すべき時に決断できない


□◆□…優嵐歳時記(2829)…□◆□

  さみどりの梅の蕾の膨らみぬ   優嵐

朝から曇りがちで、一日がかりでお天気が崩れていきました。お昼ごろにはどんよりとした空模様となり、夕方には雨が落ち始めました。木曜は一日雨の予報です。雨が多くなったのも春らしいことです。梅の開花が遅れていると聞きました。増位山ではほぼ平年並みではないかと思えます。

未開紅がぽつぽつと花を開く横で白梅もしだいに膨らんできました。白梅は蕾の間はうすい緑色をしているものと淡い紅色を帯びたものがあります。膨らむ蕾のそば近くで見ていて気がつきました。

IMG_2784<ニュースから離れて>
新聞やテレビ・ラジオとは無縁だが
たまにニュースサイトに迷い込むことがある

この世で起こっている悲劇を
つい興味本位で覗き込んでしまう
そのあとのなんともいえない気分
この感覚をどう説明したらいいだろう

□◆□…優嵐歳時記(2828)…□◆□

  梅林の季節始まる未開紅   優嵐

増位山梅林で最初に咲き出している紅梅はおそらく「未開紅」だと思います。水戸の偕楽園では一月中旬から二月上旬に咲き始めるそうです。増位山の梅林は標高が200mほどありますので、平地より少し遅めの開花と考えられます。また、八重の中輪(20〜25mm)で蕾は濃い紅色ですが、開花すると淡いピンクというところもほぼあてはまるように思います。

未開紅という名前は花が開くとき、花弁がひとつふたつ開き遅れるものがあるからだそうです。何か開花をためらっているようで、初々しい感じがしますね。抱え咲きで、八重ですから花はふくよかな形をしています。

IMG_2781<欲望>
人間の本能は「欲望」ではないだろうか
今よりさらに良いもの、素晴らしいもの
もっともっとと願う「欲望」

動物は本能を持っているが
人間のような「欲望」はない
足るを知っている
果てしなく望むなどということはない

欲望という踏み車の上を走り続ける
それがこの世というところ

□◆□…優嵐歳時記(2827)…□◆□ 

  余寒去り木々伸びやかに影を成す   優嵐

週明けは少し暖かさが戻ってきました。日の光はどんどん明るくなっています。お昼に増位山の頂に行ったら、姫路市街の屋根瓦がまぶしく光って見えました。真冬のころは、太陽の南中高度が低いため甍よりも播磨灘が光っていました。今は海が青さを取り戻し、瓦屋根にあたる日の光には春を感じます。

梅の木のうちで、開花しそうなものが増えて来ました。二本の紅梅がすでに咲いており、それに続く紅梅や白梅の蕾の膨らみが大きくなっています。ドライブウェイ脇の紅梅もそろそろ開花しているようです。車を停めて観梅を楽しんでいる人の姿を見ました。

日曜日に大阪で画材を買おうとしたのですが、思うように手に入りませんでした。大阪の中心部といえば、画材店としては規模が大きいと思います。しかし、それでも自分が思っていた通りのものはありませんでした。画材の種類が増え、全部取り揃えておくのは難しいことでしょう。家に戻ってインターネットで検索し、ネット通販がいちばん便利と認識しました。

スケッチブックの種類もサイズも豊富にそろっていますし、いろいろな画材通販をまわれば、どこで何がどれくらいの値段で売られているか、購入量に対する送料はどうなっているかを比べることができます。足を運ぶ手間もありません。SMサイズで描き比べた結果、さらに大きなサイズとして購入するのは、ストラスモア・インペリアルとウォーターフォード・ホワイトにしようと思っています。少し値段は高いものの発色のよさがやはり素晴らしい。ブログの画面ではわかりませんが、実物の差ははっきりしています。

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□◆□…優嵐歳時記(2826)…□◆□

   釣り船の影きらきらと春の海   優嵐

日曜日はアートワークに参加するために大阪へ行っていました。週末は冷え込み日曜の朝は加古川、明石あたりでも地表をうっすらと雪が覆っていました。それでもよく晴れて、明石海峡は春の日差しの下で輝いていました。

年が明けてからの三ヶ月はワークの参加者が順番にファシリテーターをやっています。今日はお二人のワークを受けました。最初は「回し絵」というワークでした。円を作って座った参加者がそれぞれ一枚ずつ四つ切の紙に何か描き、それを次々と右隣の人に渡していきます。描く時間はそれぞれ30秒で、来た紙にまた描きこんで隣へ渡すということを繰り返します。30秒ですから、考えたり細やかに描きこんだりはできません。ぱっと思いついたものをささっと描いていきます。自分が最初に描いた紙が戻ってきたら終了です。

それらの紙を前に貼ってワーク全体を振り返ります。同じメンバーが同じときに描いた絵なのですが、全部まるっきり違うというのが面白いところです。メンバーの振り返りをきいていると、同じことをやっているようでもそれぞれそのときに感じていることは違うものだと知らされます。順番に紙がまわってきますから、「前の人の図形が○○だったから、私はこう描いてみました」という、その状況にあわせて描くものを変えていった人がいるのに対し、私はそういう感じ方、描き方は全くしませんでした。

最初にこれを描く、とひらめいたら、あとはそこに何が描いてあろうと自分が最初に決めた自分のパターンをどの絵にも描きこんでいきました。全員の振り返りを聞きながら、これが自分の常日頃の行動パターンなのだと思いました。一言でいうならば「わが道をゆく」です。他人がどうだろうとどうでもいい、まず自分がありきで、人の反応をほとんど見ていません。自分がやりたいことをやりたいようにやる、そういう行動・思考パターンです。それはいいとか悪いとかではなく(弱点であると同時に強みでもあります)、そういう反応パターンを自分が持っているということがあらためてわかりました。

次のワークは陶芸用の粘土を使い、自分の立像を作るというものでした。ハンドボールほどの大きさの粘土で40分ほどで作りましたから、それほどリアルなものではありません。まず円筒形を作り、そこから全体のバランスを考えて四肢をひねり出していくという手順で作っていきました。

ただ、粘土の性質から立像で足をリアルに作るのは難しいと思い、埴輪をイメージして作っていきました。結果的になんだかモアイのような感じのものになりました。粘土は身体全体を使いますから、絵以上に没頭します。また、粘土という素材からおのずと制約を受けます。この「素材が創造物を制約する」というのは新鮮な驚きでした。制約を受けることが不自由かといえば、むしろ逆です。ちょうど俳句が十七音という制約を受けることによって、逆に創作の可能性が広がるように、粘土という素材の制約が違う形の力をくれる場合があるということに気づきました。

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