優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

2012年02月

□◆□…優嵐歳時記(2825)…□◆□

  北からの車は春の雪を積む   優嵐

冷えました。日中の外気温は5℃と真冬なみでした。兵庫県の北部は大雪だった様子です。日曜も冷え込みそうです。なんとなく文房具売り場をうろついていて電動消しゴムを買いました。消しゴムをかけるのもそれなりに力がいりますので、手の負担を軽くできるだろうか、と思ったのです。長く描こうと思ったら、手への負担はできる限り少ない方がよいと最近思っています。

買ったのはサンスターのBODEという機種です。単4乾電池ふたつで動きます。中字のマーカーほどの太さで握るところにスイッチがついています。便利なのか難点なのか微妙なのは、このスイッチが指を離すと止まってしまうことです。そのため、消している間中スイッチを押さえていなければいけません。

ネットで電動消しゴムを検索すると、いろいろありました。だいたい千円以上、中には数千円というものもあり、電池式、充電式、ACアダプターつきのものといろいろあります。買ったものは450円ほどでしたから、電動消しゴムとしては最も安価な部類といえそうです。スイッチを作動させたままにできるものもあるのかもしれません。

使い心地は不思議でした。ぬらぬらと紙の上を動いていく感じで、今までの消しゴム感覚とはちょっと違います。スイッチを押さえるのは親指の腹を使いました。文房具は結構好きなので、しばらくこれを試してみようと思っています。

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□◆□…優嵐歳時記(2824)…□◆□

  青空や木々の枝先春めけり    優嵐

少し風がありましたが、いいお天気でした。森を歩いていると、落葉樹の枝先がなんとなく丸くやわらかい感じになってきているのがわかります。山を遠くから見ても、全体が何かほんわかした雰囲気です。季語で春の山を「山笑う」というものがあります。山がゆったりと微笑み始めている、そういう景色です。

右腕はほとんど元通りといいたいところなのですが、不思議にも山を歩いていると、肘を曲げるときに強張りを感じます。ただ腕を下げて振っているだけなのにこういう状態になるのはなぜなのか。それ以外は動作としてこれができないというものはありません。以前から問題なくできた腕全体を使った動きはもちろん、指先や前腕のみに力を入れるような動作もほとんど問題なくなっています。

意外なやっかいものが右肩のコリです。どの程度の肩こりが「ひどい」ものなのかはわかりませんが、今まで肩こりと縁がなかったので、なんだかなあという状態が続いています。姿勢を変えたりストレッチをしたり温めたりいろいろやっています。コリを感じたときに意外にいいと思ったのが、テニスボールです。肩甲骨と首のあたりにテニスボールを置いてその上に寝転び、身体の重みをかけます。なんとなくその直後は肩が軽くなる感じです。

IMG_2771<素晴らしい失敗>
Dropboxの創業者ドゥルー・ハウストンは
MITの学生だったころ
学内ネットワークシステムで自分のデータにアクセスしていた
どこでパソコンを起動してもデータにアクセスでき
資料をUSBメモリーに入れて持ち歩く必要はなかった

卒業してネットワークシステムにアクセスできなくなり
仕方なくUSBメモリーを持ち歩いていた
まるで原始時代に戻ったようだと感じながら

ある日ボストンからニューヨークへの長距離バスに乗り込み
パソコンを開いて仕事をしようとしたら
資料が入ったUSBメモリーを家に忘れてきたことに気づいた
彼はバスの中でDropboxの第一歩となるコードを書き始めた

ひとつの失敗が単なる失敗で終わらず
次の大きな飛躍への起爆剤になることがある
ハウストンがUSBメモリーをその日家に忘れてこなかったら
Dropboxが今出現しているかどうか

その日の彼の失敗は「素晴らしい失敗」だった
失敗を単なる失敗に終わらせず
「素晴らしい失敗」にするためには何が必要だろうか
誰もが素晴らしい失敗への可能性を握っている

□◆□…優嵐歳時記(2823)…□◆□

  薄氷を揺らし昼の陽揺らしけり   優嵐

昨日は、お昼ごろからは日差しが出てきました。三日連続で太陽の姿を見ませんでしたから、久しぶりの春の陽は明るく感じられました。「薄氷(うすらひ)」とは、春先にごく薄くはる氷、あるいは解け残った薄い氷をさします。氷は冬の季語ですが、薄氷を早春の季語としているところに微妙な季節のうつろいを愛しむ日本人の感性がありますね。

今、『優嵐スケッチブック』に描いている絵はクレオロールとゲルマーカーで彩色しています。基本的にはクレヨンと同類ですから、描いた後に定着させる必要があり、ホルベインのクレヨンコートを使っています。これは有機溶剤なので、吹きつけは屋外でおこなっています。このところ、雨続きで定着していない絵が何枚かたまっていました。

昨日はお天気が回復し、まとめて定着作業をしたあと、絵を並べて見ていました。今試している紙は全部で14種類あります。ゲルクレヨンは透明水彩ほど紙の影響は受けないと思っていますが、それでもずらっと並べると、紙のもともとの色、発色の差というのがわかります。発色が最も鮮やかだと思えたのはストラスモア・インペリアルでした。それに次ぐのがウォーターフォード、ラングトンあたりです。

やはり高価な紙はそれだけのことはあるようです。今描いているのはほぼSMという小さなサイズですから、大きな画面なら、その差はもっとはっきり出るのかもしれません。色合いはその人の好みもあり、鮮やかなのが即よいとは限りません。ただ、クレオロールは透明感があり、その透明さを生かして描きたいと思うと発色のいい紙を使うのが一番かもしれない、と思っています。

発色のほかには、描いたときの感触というのも重要です。これまで使ってきたマルマンのエコノミーな画用紙と、これらの水彩紙との違いは、発色と同時に、描いたときの手が受ける感触です。指にかえってくる描き心地の反応が、いい紙はやはりいいのです。人間の感覚というのはほんとうに微妙なものだと自分のことながらあらためて感心しています。

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□◆□…優嵐歳時記(2822)…□◆□

  旅の絵を描いておりぬ春灯下    優嵐

雨模様が三日続きました。春の長雨というにはまだ少し時期が早く、週末は冷え込む予報が出ています。お天気が悪いと手元が暗いので昼間でも電灯をつけて絵を描きました。雨がやんでいたときを見計らって散歩に行き、梅林で別の紅梅が開き始めているのをみつけました。

テレビもネットのニュースさえもほとんど見ないのですが、ウェブをちょこちょことのぞいていると、めぼしいニュースはなぜかどこかでフォローできます。楽天が最近Koboというカナダのebook企業を買収したそうです。ここはebook部門でAmazonのライバルになりそうな唯一の企業だとか。それに関連する記事を読んでいて、ソーシャルリーディングなるものを知りました。SNSの読書版のようなものらしいです。

私は本を読むことが好きです。読書という行為は個でおこなうのが基本であり、ソーシャルを前提としたら、読書の核心部分が大きく変わってしまうような気がします。読了すれば、それを誰かと分かち合いたいとは思うかもしれません。しかし、読書中はソーシャルから離れて、自分と本の世界に入りたい。ソーシャルはある意味では「雑談」ですから。

IMG_2745<簡単だけど難しいこと>
心の平穏を求める人に
スピリチュアルな教えが説くことには
共通点がある

一度にひとつのことをせよ
今にあれ
あるがままに

最も簡単で難しい教え


□◆□…優嵐歳時記(2821)…□◆□

   神門を出れば春光あふれおり    優嵐

雨が続き、昨日は一日中こやみなく降り続いていました。どこへも出かけず部屋で絵を描いていました。先日行った大阪と赤穂の絵を描いたのですが、GPS機能のついたカメラが欲しくなりました。大阪のような大都会では、枚数が多くなるとそこがどこだったのかわからなくなります。何日にも渡って絵を描くための取材をするならGPS機能が必須でしょう。

Windows7になって驚いたのは、Windows Live フォトギャラリーというものがついていて、PhotoShopでやっていたようなことが全部そこでできるということでした。私の場合、PhotoShopのごく簡単な機能しか使っていませんでしたから。『優嵐スケッチブック』にアップしている絵は、Windows Live フォトギャラリーで、撮影した後の修正をおこなっています。ちょっと前までは考えられなかったこと、できたとしても非常に高価だったものが、フリーで手に入るようになっているのです。

利用する側としてはありがたい時代ですが、提供する側は大変だろうと思います。開発して収益を得られると思っていたものも、あっという間にフリー化の波に洗われるのですから。

IMG_2734<外れる予言>
未来予測が当たらないのは
その段階では誰も想像できなかったような
モノ、サービス、システムが現れるから

50年前のSF小説で
インターネットのようなサービスの出現を
描いているものがあるだろうか

現れてしまえば
ごく当たり前のように見えるが
出現するまでは誰も予測がつかないもの
そういうものが世界を変えていく


□◆□…優嵐歳時記(2820)…□◆□ 

  春の雨降り出す中を歩きけり   優嵐

週明けは一転して雨になりました。朝から曇っていましたが、お昼前ごろから雨が落ち始めました。雨が降り出す前に散歩に出かけようと思ったのですが、出かけたと同時に細かな雨が降って来ました。それでも森の中なので、傘はささずに歩きました。午後からは静かな雨の一日でした。雨が周期的に降るようになったのも春です。

右腕はこのところふと不具合を忘れていることがあります。完治するというのはこういうことだろう、と思います。まだ完全にもとのままというわけにはいきませんが、違和感を感じることが減り、無造作に何かをしている瞬間が増えました。

IMG_2750<暖かくなったら>
暖かくなったら
絵を描きに出かけたい

アウトドアで遊ぶために
山や海へ出かけた

今度は絵を描くために
自然の中や街角へ出かけたい


□◆□…優嵐歳時記(2819)…□◆□

  ひたひたと沖の小島に春きざす

日曜日は、赤穂市の宝珠山とそれに連なる坂越浦後背丘陵を歩いてきました。くわしい記事はこちらをご覧ください。穏やかな晴天で海はいつにもまして静かでした。坂越は古代から良港として栄え、江戸時代以降も赤穂の塩の積出港として繁栄しました。歴史的な町並み保存地区は千種川の河口と坂越浦との間に続く一画で、海運と河川交通との接点という珍しい位置に発展した町並みです。

山に登っていくとあちこちに点在する島が見え、穏やかな波と海の光を満喫できました。北国ではまだ冬が濃厚に残っているのでしょうが、瀬戸内沿岸部では春を間近に感じることができます。牡蠣の養殖が最近は盛んなのか、沖にはたくさんの牡蠣筏が並んでいます。山から降りての帰途、道沿いの牡蠣の直売所は牡蠣食べ放題を楽しむ人や牡蠣を買い求める人で賑わっていました。

IMG_2737<もし失敗しないと分かっていたら>
「もし失敗しないと分かっていたら、何がしたいですか?」
自分がやりたいことを浮き彫りにする質問だという

半分当たっているような半分間違っているような
もし何をやっても失敗しないなら
逆説的だけれど
生きていくことに絶望するような気がする

生きていくことのおもしろさは
失敗の裏にあると思うから

うまくいかないな
なぜなんだろうな
こうしたらどうだろう
いやいやこうかもしれないな

そうやって試行錯誤していくことが
人生を生きる意味なんじゃないだろうか

□◆□…優嵐歳時記(2818)…□◆□

  暁の後の春眠心地よし   優嵐

「春眠暁を覚えず」と言われます。しかし、暁に気づいてそれから一眠りするのがまた気持ちのいいものです。納豆を買ってきてわさび漬けとあえました。確かにこれはおいしいです。わさび漬けの強い辛味が納豆とあえることで和らげられ、たくさん食べられます。わさびの食べ方として、アイスクリームともあうとのことです。そういえば、以前わさびソフトクリームというのを食べたことがありました。

あの辛味とアイスクリームの取り合わせが、塩昆布がお汁粉や善哉にあう、というのと似ている気がします。意外なものが意外なものにあうというのが食べ物の面白いところであり、そういうものをいろいろ試した人が新しい味を発見するのでしょう。考えてみれば日本人はこういうことを発見するのがうまい民族ではないかと思います。

IMG_2730<不変>
午後六時を過ぎて
山際に明かりが残っている
日が長くなった

気温は行ったりきたりするけれど
日の光は一直線に進む
日の出も日没も毎日変わる

変化し続けることの不変


□◆□…優嵐歳時記(2817)…□◆□
  
  立ち寄りて書店を出れば春夕焼け   優嵐

寒の戻りで気温の低い日が続いています。しかし、夕暮れは随分遅くなりました。久しぶりに書店に行ってぐるっと一回り、あれこれ本を眺めて外へ出たら夕焼け空でした。「夕焼け」は単独では夏の季語になります。そこで「春夕焼け」との季語です。

宅配便の荷物を受け取るときに使っているワンタッチの印鑑ホルダーの朱肉のスポンジが傷んできたので、100円ショップで新しいものを購入しました。ところが、このホルダーの板バネが甘くて印鑑をきちんとホールドしてくれません。古い方の印鑑ホルダーの板バネはしっかりしているため、印肉のスポンジを引き剥がして交代させることにしました。

宅配便で伊豆のわさびが届きました。さっそくわさび漬けをお昼に食べました。収穫したてのわさびを酒粕に漬け込んだもので、ご飯が進みます。納豆とあえても美味しいとのことでしたので、今日は納豆を買いに行こうと思っています。辛味が効いて一口でたくさん食べると涙がじんわり…、でした。

IMG_2714<わさび>
考えて見れば
驚くようなことはいろいろある
私たちがそれに驚かなくなっているだけで

初めてわさびを食べた人は誰だろう
わさびをこんな風にして食べればいいと考えるまでに
わさびを食べられないものとして
葬ってしまわなかったのはなぜ?

そのおかげで
おいしいわさび漬が食べられる

□◆□…優嵐歳時記(2816)…□◆□

  紅梅のうつむき加減二三輪   優嵐

昨日も寒い一日でした。もしかしたら明け方の最低気温は寒中よりも低かったかもしれません。増位山の自然歩道ではあちこちで霜柱を見かけました。風もあり、放生池は半分凍っていました。近くにおいてあるバケツの氷も厚そうでした。梅林の紅梅はそれでも着実に開花しています。他の梅も蕾の膨らみを増し、開花が近いことをうかがわせています。

ZARDは今日でデビュー21周年になります。去年は20周年ということでいろいろな企画がおこなわれました。そのいくつかを楽しませていただきました。そこで今日も坂井泉水さんの肖像を描いてみました。

<揺れる想い>
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モンバルキャンソン紙 300g F2(192×239mm)、万年筆PARKER SONNET(M)&プラチナ顔料ブラック、パイロットゲルマーカー、PILOTクレオロール

写真は四枚目のアルバム『揺れる想い』(93.7.10)に使用されているポートレイトを元にしています。この写真を見ながら、あらためていろいろなことに感心してしまいました。まず、その微妙な色合いです。このアルバムのポートレイトはすべてラベンダーともライラックとも、藤色とでもいう微妙な薄紫色にわずかに桜色が溶け合ったような、優しいカラーで印刷されています。これは通常の四色印刷では何度やってもうまくいかず、結局、8色のインクを混合して50パターンの校正見本の中から選ばれたといいます。

また、この微妙な彼女の表情を的確にとらえているカメラが素晴らしい。少し手ブレ気味に見えるのですが、そういうのが逆に坂井泉水さんの場合はいいのだろう、とこの写真を見ると思います。はっきりくっきり写ったカメラ目線の写真ではこの味は出ません。彼女はビジュアル的に美しい人ですが、もし単にそれを「きれい」だけで撮影していたら、こういうポートレイトはできないだろうなあと思わずにいられませんでした。


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