鳥威
早稲の田は稲穂が垂れ始めました。家の周囲は住宅が増えたものの、まだところどころ田が残っています。

facebookにアカウントを持っています。友人の消息を読むと同時に、マスメディアのfacebook記事を読むこともあります。先日、ハフポストに載っていた、「親父の形見〜生涯をかけ、父が私に伝えたかったこと」という記事が妙に心に残りました。

記事を書いた吉岡秀人さんは「小児外科医/特定非営利活動法人ジャパンハート ファウンダー・最高顧問」という肩書きを持ちます。社会的には成功した人と位置づけられるでしょう。

著者の父は、彼にとってあまりよろしくないイメージの男だったといいます。父親は祖父のあとをついで中小企業の工場を切り回していました。しかし、オイルショック後の家業は衰退の一途をたどり、著者が高校生のころには廃業して酒と賭け事に没入するようになります。借金とアルコール依存に身を持ち崩し、廃業後はいくつかの職を変わって最後はスーパーのガードマンでした。

父親は小さい頃から頭脳明晰で体力もあり、運動神経も抜群だった、と書いています。著者にとって不可解だったのは、自分よりもはるかに優秀で才能もあったはずの父親がどうしてそんな状態にならなければいけなかったのか、ということでした。

単なる反面教師であった父親の姿が40歳を過ぎたころから、その意味を著者に語りかけるようになります。それは「人間、その人の能力以下の時間を生きていると必ず、人生つまらなくなる。面白くなくなってエネルギーをもてあましはじめると、それを消費するために、多くはくだらない事をしはじめる。」ということでした。

「結局、父親の最大の失敗は、その才能と能力に見合った日常を送れなかった、送らなかったことにある。その余ったエネルギーは、ギャンブルとアルコールに投下された。そして人生の軌道をはずれはじめ、ついに修正することなく生涯を終えてしまった。」このように著者は述懐します。

この記事が心に残ったのは、自分自身の父親の姿が重なって見えたからでした。「小さい頃から頭脳明晰で体力もあり、運動神経も抜群だった」のは同じです。しかし、最終的には職業生活も家庭生活も破綻して、「どうしてこんなことに…」という状態で生涯を終えました。

人は何かに懸命になる必要があるのです。エネルギーを振り切るくらいのものを見つけ、日々生きなければならない。神さまから与えられたエネルギーが大きければ大きいほど、それが逆回転を始めたら、その人にとって破壊的な影響をもたらすのでしょう。

「自分の毎日を面白く充実したものにしたければ、そして、人生をそこそこ満足したものにしたければ、自分の才能を裏切らない人生を送るしかない。もし、毎日がつまらないのならば、それは自分の才能・能力以下で生きてるということだと思う。」吉岡さんはこのように書いています。
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