春の山
「春はあけぼの やうやう白くなりゆく山ぎは 少し明りて紫だちたる雲の細くたなびきたる」とは清少納言の『枕草子』の冒頭です。

夜が明けてくる頃の東の空というのは季節を問わず美しいものですが、あえて春の最も美しい時刻としてこれを持ってきたのが清少納言のセンスです。

続く文章は夏は夜、秋は夕暮れ、冬はつとめて(早朝)と綴られ、四季それぞれの時間とそのありさまを読者の脳裏にぱっと想像させます。『枕草子』はこのように、作者の選択と編集の冴えが全編に渡って繰り広げられます。
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