□◆□…優嵐歳時記(72)…□◆□

    紫雲英田に高き真昼の光あり   優嵐

子どものころは、家の周りにいっぱい紫雲英(げんげ)田があり
ました。刈り取りが終わった晩秋から田に水が入れられる初夏まで、
田んぼは一番の遊び場でした。ゲンゲ田では、子どもなら横たわれば
すっぽりと身体が隠れてしまいます。ゲンゲに包まれ、不思議な
安らぎ感とともに霞んだ春の空を見上げていたものでした。まあ、
こんなことをすると決まって服に草の青い汁がついてとれなく
なるのですが。

最近では田んぼで遊ぶ子どもの姿は、すっかり見かけなくなりました。
ゲンゲ田の数も減っています。もうあの中で転げまわって遊ぶような
子はいないのでしょうね。それでも、郊外の宅地が立ち並ぶ一角に
げんげ田が残っているのをみつけたりすると、うれしくなります。
私にとっての"原風景"のひとつなのかもしれません。