優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

タグ:あおぞら

秋曇り
『あおぞら』には『二重唱(デュエット)』のB面『月見草』と、『ロマンス』のB面『私たち』が入っています。『ロマンス』と『私たち』はどちらをA面にするか発売直前まで決まらず、最後は岩崎宏美も含めたスタッフ全員で多数決をして一票差で決まったといいます。

筒美京平は『私たち』を推したそうです。岩崎宏美は『私たち』のキーが『ロマンス』より高く、当時は朝の生番組で歌う機会が多かったことから、歌いやすさを優先して『ロマンス』に入れたとか。もし逆になっていたら、その後の運命が変わっていたかもしれません。

当時の朝の番組で彼女が歌っている様子が「岩崎宏美さんの再アップ動画 1976」で見られます。喋りにはまだ子どもの雰囲気が残っており、「あがっちゃって…」ととちるあたりが可愛らしいです。ただ、歌はさすがです。
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秋暑し
『あおぞら』は恋に恋するような年頃の少女の気持ちを描き、それが岩崎宏美の16歳の声で歌われ、見事な作品になっています。冒頭の『ロマンス』をアルバム全体のテーマとして、少女の一日を辿るように楽曲が展開していきます。

二曲目の『はだしの散歩』の時間帯は早朝。裸足で駆けていく少女の姿が描かれます。最後の曲は『この広い空の下』、夜です。「あなたお休み言ってください この私が言ったあとで〜」で終わります。ファゴットを思わせるエンディングの伴奏が美しいバラードです。

そして再び『はだしの散歩』の早朝へ。喜びと願いと恐れとときめき…、それらが相前後しエンドレスで続いていく世界が表現されています。『あおぞら』という楽曲はありませんが、この言葉が示す明るさ、抜けるような青さこそこのアルバムのコンセプトです。
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岩崎宏美が『二重唱(デュエット)』でデビューしたのは1975年4月25日、16歳5か月の時です。同年7月25日にリリースした『ロマンス』が大ヒット。『あおぞら』はその『ロマンス』を冒頭に採用して9月5日にリリースされたファーストアルバムです。

プロとして歌い始めた16歳の初々しいボーカルを聴けます。デビュー時のキャッチフレーズは「天まで響け!」。これほどわかりやすく本質をとらえたキャッチフレーズは他にないでしょう。

どこまでも軽やかに伸びていく透明感のある声が素晴らしい。まだ声に子どもの名残があり、技術うんぬんというよりも天性の才能を活かしひたむきに歌っています。この先何十年も歌っていくことになる少女の出発点として貴重なアルバムです。
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