優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

タグ:嬉野温泉

君子蘭
チェックアウトするとき、受付カウンターの隣に南西アジア出身と思われる若い女性が「研修中」の名札をつけて立っていました。出発のときに荷物を持ってくださったので、「どこから来られたのですか?」とたずねると、「ネパールです」とのこと。

以前、他の旅館でこうしたアジアの国から研修に来られている人に会ったことがあります。日本語には謙譲語、尊敬語、丁寧語など立場の上下によって入れ替わる複雑な使い方があり、それを接客業で完璧に使いこなすのは、日本人でも難しいものです。「ネパール、山が美しい素晴らしい国ですね」と話して別れました。
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春深し
和楽園の玄関には緑茶色の暖簾がかかっていました。暖簾がかけられているのは太い青竹で、こちらも緑茶の色に通じるものです。すべて嬉野茶を意識してのことかと思い、細部までこだわられている印象でした。
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夏近し
和楽園の庭でシャガが咲いていました。近畿地方ではゴールデンウィークあたりから咲き始めるので、やはり季節が進んでいると感じました。

シャガは中国原産で早い時期に日本に入ってきた帰化植物です。そのため人間に近いところでしか見られません。少し影があるような場所を好んで咲きます。アヤメ科アヤメ属の花で、三倍体であるため種子ができず送出枝で増えます。
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春深む
4月11日でしたが、和楽園の前の通りに沿うソメイヨシノはほぼ葉桜になっていました。葉桜のむこうに塩田川にかかる橋の赤い欄干が見えます。その上流奥の対岸に「シーボルトの湯」という公衆浴場があります。

シーボルトは出島に滞在したドイツ人医師です。文政9年(1826)オランダ商館長の江戸参府に同行しました。そのとき嬉野温泉に立ち寄り詳しい記録を残しています。シーボルトがこの温泉に寄せた関心の深さにちなんで命名されたようです。

彼はここの森林のブナやヒノキの圧倒的な迫力、モミジ、ヤマツツジの美しさ、タンポポ、アザミなどについて記述していることから、今頃の季節に嬉野温泉に滞在したと思われます。
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春の朝
朝食には地元佐賀県産の素材が使われた料理が並びました。嬉野茶を入れた茶粥、有明海産の海苔、佐賀県白石町産のご飯などの他、珍しいものには冷やした緑茶にお酢を入れたドリンクが出てきました。もちろん、どれも大変美味しかったです。
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躑躅
夜の間に雨が降ったようでした。朝、外に出てみると前の庭のツツジにまだ雨滴が残っています。かなりしっかり降ったようですが、全く気づきませんでした。

「茶ごごろの宿和楽園」は昭和48年(1973)創業、今年で50周年です。老舗の部類にはまだ入らないのかもしれませんが、細やかな心づくしで宿泊者の気持ちをつかむことに成功している宿だと思います。
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春の夕
緑茶露天風呂を楽しんだ後は夕食です。部屋ではなく「旬彩庵うれしの小町」という食事スペースで食べることになっていました。日が長くなっており窓の外にはまだ明るさが残っています。

好みに応じて緑茶を擦って料理にかけたり、しゃぶしゃぶの出汁が緑茶入りで薄緑色をしていたりと、嬉野茶が料理にふんだんに活かされています。
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和楽園の露天風呂は嬉野茶を浸した湯が巨大な土瓶や急須から流れ出てくるという珍しい緑茶風呂です。嬉野温泉の湯は美肌の湯といわれる重曹泉で、ナトリウムを多く含んでいます。お風呂は男女が朝夕で入れ替わります。

着いた日の露天風呂は急須から緑茶風呂が流れ出てきました。パックに入ったお茶を手に取って肌に当てたりすることもできます。まわりに咲くツツジを眺めながら緑茶風呂を堪能するという贅沢なひとときでした。
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春の川
部屋からは塩田川が見えました。長崎県との県境虚空像山北部を源流に嬉野市中心部を流れて有明海に注ぐ二級河川です。部屋の目の前には赤い欄干の橋が見え、周囲には温泉旅館が軒を連ねています。今は静かですが観光シーズンには大勢の人でにぎわうのでしょう。
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嬉野は茶どころとしても有名です。宿泊した「茶心の宿和楽園」では、部屋に嬉野産の緑茶に沿えて緑茶の淹れ方を書いたメモが置いてありました。その通りに淹れたら、これがまあ美味しいこと。お茶の種類と淹れ方でこれほど変わるものかと驚きました。

嬉野茶は茶葉の形状が勾玉状で丸く、さわやかな香りとコクのあるうまみが特徴です。お茶の生産量そのものは全国の2%と希少ですが、それだけにその特徴ある美味しさで全国に知られています。
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