優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

タグ:岩崎宏美

秋気澄む
岩崎宏美の『Dear Friends さだまさしトリビュート』では、『虹〜Singer〜』も印象深い曲です。さだまさしが雪村いずみのデビュー40周年のために作りました。この歌の主人公の姿は岩崎宏美自身も彷彿とさせます。

「こんなにも長い間 なぜ歌って来たのだろう 小さな幸せや 伝説の向こう側に逃げ込む
チャンスはいくらもあったのに」 「全てを手に入れたり 全てを失くしたり あなたまで ひきかえにして」 45年以上も第一線で歌い続けるというのは、恵まれていると同時に人には言えないような辛苦もあったことと思います。

大きな才能を与えられ生まれてきたものは、それに付随するもろもろのものも背負わなければならない。大きなものを与えられた人は大きな荷物を、小さい人は小さいなりの何かを。そして、それぞれがその場でそれに応じたことを精いっぱいやる、そういうことかな、と。
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岩崎宏美の『Dear Friends さだまさしトリビュート』をYouTubeで視聴すると、『いのちの理由』で手話を交え歌う様子が見られます。歌の内容を耳の不自由な方にも伝えたいと手話の専門家の指導を仰いだとか。2012年に63枚目のシングルとして発売されています。

『いのちの理由』を一言で言うならば、人は出会うべきものに出会うために生まれてくる、ということでしょうか。歌は詞と曲がともに支えあって素晴らしいものになります。手話で詞の世界を伝えようとした岩崎宏美。彼女が詞を大事にしてきたことを物語っています。
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黄葉
岩崎宏美に関して、まだ初期のアルバムくらいしか聴いていません。しかし、偶然『Dear Friends さだまさしトリビュート』を聴いて、10代の彼女とは違う良さがあるなあと思いました。

10代のころの歌はアスリートに近いです。とにかく声は出る、伸びる、どこまでも疲れも挫折も何も知らない才能の爆発で歌っている印象が強い。ただ、それだからこそいい部分もあります。どれほどの名優も子役の魅力には適わないようなものです。

このアルバムの中で最も惹かれたのは『人生の贈り物〜他に望むものはない〜』でした。作詞は韓国のシンガーソングライター楊姫銀、作曲がさだまさしです。韓国語の詞を日本語にしているのかどうかわかりませんが、この詞の内容は10代や20代の歌い手では全く聴き手に響かないでしょう。
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コスモス
コスモスを漢字では「秋桜」と書きます。「あきざくら」と読んでいましたが、「コスモス」と読むのが一般的になったのは、山口百恵の『秋桜』(1977)がきっかけだそうです。多くの歌手がカバーしており、岩崎宏美も『Dear Friends さだまさしトリビュート』(2012)でカバーしています。

岩崎宏美と山口百恵は同じ「スター誕生」の出身で同学年。35年後に同曲を歌っているわけで、もし山口百恵が現役を続けていたなら、どんな風に歌っただろうか、とか、1977年当時の岩崎宏美だったらどんな感じだっただろうか、と想像で楽しむこともできます。
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秋曇り
『あおぞら』には『二重唱(デュエット)』のB面『月見草』と、『ロマンス』のB面『私たち』が入っています。『ロマンス』と『私たち』はどちらをA面にするか発売直前まで決まらず、最後は岩崎宏美も含めたスタッフ全員で多数決をして一票差で決まったといいます。

筒美京平は『私たち』を推したそうです。岩崎宏美は『私たち』のキーが『ロマンス』より高く、当時は朝の生番組で歌う機会が多かったことから、歌いやすさを優先して『ロマンス』に入れたとか。もし逆になっていたら、その後の運命が変わっていたかもしれません。

当時の朝の番組で彼女が歌っている様子が「岩崎宏美さんの再アップ動画 1976」で見られます。喋りにはまだ子どもの雰囲気が残っており、「あがっちゃって…」ととちるあたりが可愛らしいです。ただ、歌はさすがです。
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秋暑し
『あおぞら』は恋に恋するような年頃の少女の気持ちを描き、それが岩崎宏美の16歳の声で歌われ、見事な作品になっています。冒頭の『ロマンス』をアルバム全体のテーマとして、少女の一日を辿るように楽曲が展開していきます。

二曲目の『はだしの散歩』の時間帯は早朝。裸足で駆けていく少女の姿が描かれます。最後の曲は『この広い空の下』、夜です。「あなたお休み言ってください この私が言ったあとで〜」で終わります。ファゴットを思わせるエンディングの伴奏が美しいバラードです。

そして再び『はだしの散歩』の早朝へ。喜びと願いと恐れとときめき…、それらが相前後しエンドレスで続いていく世界が表現されています。『あおぞら』という楽曲はありませんが、この言葉が示す明るさ、抜けるような青さこそこのアルバムのコンセプトです。
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岩崎宏美が『二重唱(デュエット)』でデビューしたのは1975年4月25日、16歳5か月の時です。同年7月25日にリリースした『ロマンス』が大ヒット。『あおぞら』はその『ロマンス』を冒頭に採用して9月5日にリリースされたファーストアルバムです。

プロとして歌い始めた16歳の初々しいボーカルを聴けます。デビュー時のキャッチフレーズは「天まで響け!」。これほどわかりやすく本質をとらえたキャッチフレーズは他にないでしょう。

どこまでも軽やかに伸びていく透明感のある声が素晴らしい。まだ声に子どもの名残があり、技術うんぬんというよりも天性の才能を活かしひたむきに歌っています。この先何十年も歌っていくことになる少女の出発点として貴重なアルバムです。
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秋彼岸
歌詞入りの音楽でよく聴いたのはZARDでした。これもYouTubeで出会いました。坂井泉水の声は岩崎宏美とは性質が違いますが、大変魅力のある声です。初期の岩崎宏美の声は、その伸びと張りで、突き抜ける爽快感に満ちています。坂井泉水の声はもっと柔らかで、ほのかに哀愁があります。

ZARDとしてのデビュー時、坂井泉水はすでに22歳でしたから完全に大人の声になっています。彼女が16〜18歳ごろならどんな声で歌ったのだろうかと想像し、坂井泉水の「時分の花」を聴いてみたかった気がします。

また、彼女が早くに亡くなったのはとても残念です。もし存命ならオリジナル曲だけでなく、カバー曲でも楽しませてくれたでしょう。『異邦人』のカバーは見事でしたから。
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台風圏
台風は日本海沿いに東へ進んでいます。兵庫県にはこれから夜にかけて最接近します。

歌詞の入った音楽は多少の例外を除いてこれまであまり聴きませんでした。歌詞の内容が頭にイメージされてBGMとして聴くには邪魔になるからです。歌詞なんか聴かないという人もいてそれにはびっくりしました。そんなこと可能なんでしょうか?

岩崎宏美のデビューから8枚目までのシングルはすべて作詞が阿久悠、作曲が筒美京平です。初期の大ヒット作『ロマンス』を聴いていると、よくこんな言葉が選べるなあと感心します。「あなたお願いよ 席を立たないで 息がかかるほどそばにいて欲しい」「もしも飛べるなら飛んでついていく たとえ嵐でもたとえ遠くでも」
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台風
アイドルは「時分の花」を楽しむジャンルです。それゆえ数年で消費されていきます。「時分の花」を超えた「まことの花」を持ち得るかどうかがその後を左右します。岩崎宏美が当初から「まことの花」を持ち合わせていたことは、この歌唱だけでわかります。

『ドリーム』のサビを聴いたときは、歌というよりも、スポーツの決定的瞬間のような感覚でした。「決まった!トリプルアクセル」とか「大外刈り一本!」「逆転スリーラン!」といった感覚。フィジカルの凄さがもたらす解放感とでも言いますか。
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