優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

タグ:金沢市

五月
ジェームズ・タレルの「ブルー・プラネット・スカイ」は、何もない部屋の中に入ると天井に560cm四方の開口部があるという作品です。部屋の四方には壁に沿って石製のベンチが巡らされており、鑑賞者はそこに座ってその日の空を見上げます。

一日の間で移り変わる空の景色と光の具合を楽しむ作品です。雨の日には雨が降りこむようです。部屋の周囲に雨水を流すための溝が切ってありました。豪雪だったこの冬、部屋はどうなっていたのでしょう。雪かきをしたのか?天井を覆うと作品になりませんし。
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「雲を測る男」の足元から手前に目を移すとコデマリ、タニウツギ、ベニウツギなどが咲いていました。これも「緑の橋」という作品です。作者のパトリック・ブランは植物学者で、幼いころに<垂直庭園>というものを思いつき、長年その研究を続け今では世界各地でそのプロジェクトを手がけています。

自然に咲いているように見えましたが、金沢の気候に適した植物100種がわずか14cmの厚さの壁に南北、上下での条件を考慮して植えられています。季節によって咲く花は異なり、生長もしますから見るたびに姿が変わる作品です。
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夏めく
加賀友禅模様の壁の前でロッキングチェアに揺られながら外を眺めると、円形の展示室14の屋根の上にブロンズ像が立っています。ヤン・ファーブルの「雲を測る男」です。

終身刑で独房に収監されながら、そこで鳥類学者になった男の実話をもとにした映画『終身犯』から着想を得て作られました。映画の最後で男は鳥が飼えなくなり、「雲でも測って過ごす」と答えます。雲を測る男の身体は作者の身体をかたどったものです。
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五月
「甲冑の解剖術」を見た後、館内を周りました。目をひいたのは加賀友禅の模様がいっぱいに描かれた壁でした。そこへ行きたいと思うのですが通路はそのまま真っ直ぐ進むことはできず巡り巡ってたどり着きました。これもあるいは展示側の意図かもしれません。

加賀友禅模様の壁画の前にはロッキングチェアが数脚置かれ、観覧者は自由に座って前面のガラス越しに屋外の展示作品を見ることができます。後でこの壁画も台湾の美術家マイケル・リンの作品だと知りました。
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プール
恒久展示作品のひとつにレアンドロ・エルリッヒの「スイミング・プール」があります。展覧会ゾーンの屋外、光庭と呼ばれる場所に設置されており、見た目は小さめのプールです。しかし、実は水はプールの中の上面に貼られたガラスの上に10cmほどあるだけです。

ガラスの下にも入れて上を見上げられます。残念ながらこのときは展示入れ替え期間中で入れませんでした。日常の先入観を覆すアートです。現代アートというのは思いがけない驚きと出会えるものがあるから面白いですね。
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夏きざす
金沢21世紀美術館は外側が円形のガラス張り、中は展示室とそれらを結ぶ直線通路という作りになっています。設計は妹島和世と西沢立衛の建築ユニットであるSANAA。シンボルマークにフロアマップがそのまま使われています。

三つの有料展覧会のうち「甲冑の解剖術―意匠とエンジニアリングの美学」を見ました。画期的と感じたのは、甲冑を360度ぐるりと見回せる展示になっていたことです。具足が13領、兜が4頭展示されており、実戦で使用され兜に刀傷が残るものもありました。
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椎の花
金沢21世紀美術館へ行くつもりで百万石通りのバス停を降りると、目の前は芝生の広場です。美術館は百万石通りの向かい側にあるのですがよくわからず、まずこの芝生の先にある建物へ行きました。これが石川県政しいのき迎賓館でした。

国会議事堂などを手がけた矢橋健吉の設計で大正13年(1924)に建設された旧県庁をリニューアルしたものです。国内最古の鉄筋コンクリート製県庁舎の正面を保存し、背面はガラス張り構造を採用。玄関前に並ぶ樹齢300年の一対のスダジイは「堂形のシイノキ」と呼ばれ、国の天然記念物に指定されています。今、花の時期を迎え強く匂いました。
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初夏
金沢駅の兼六園口にはもてなしドームがあります。アルミやステンレスの構造に支えられた流れるようなガラスの天井です。雨や雪の多い金沢を訪れた人々に傘をさしかけるおもてなしの心を表現しています。見上げると未来的な空間から降り注ぐ光を堪能できます。

その先にあるのが鼓門。高さ13.7m、加賀宝生流の鼓をイメージした木造の門です。これらを設計したのは白江龍三です。当初、鼓門を作る予定はなかったとか。しかし、市民から金沢には木造や黒い瓦が必要との声が寄せられ、最終的に鼓へと収斂していったそうです。
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夏はじめ
金沢では駅近くの「ホテル金沢」に宿泊しました。窓からビルの向こうに雪を被った山が見えました。白山です。石川と岐阜の県境にそびえる標高2,702mの活火山です。富士山、立山とともに三大霊峰として古くから信仰の対象になってきました。他の地域で雪が消えた今でも「白い山」は一目瞭然です。
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夏の夕
夕食は近江市場の「旬彩和食口福」で「きときと刺身御膳」を食べました。とても美味しかったです。近江市場は金沢市民の台所と言われ狭い小路に約170店が並んでいて新鮮な魚介、野菜などを売っています。夕方でほとんどの店は閉店していましたが、午前中なら活気に溢れていたことでしょう。
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