優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

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◆平戸つつじ
出島の北西端には明治11年（1878）に建てられた旧出島神学校があります。現存する日本最古のキリスト教（プロテスタント）の神学校です。そのかたわらにヒラドツツジが咲いていました。隣には明治36年（1903）建造の旧長崎内外クラブがあります。

遣隋使の昔から貿易で栄えた平戸島で、ヒラドツツジはケラマツツジを主な親とし、リュウキュウツツジ、モチツツジ、キシツツジなどが自然交配を繰り返してできました。花が大きく丈夫で刈り込みに強いため、街路樹や公園などによく利用されています。
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◆春長く
11日はまず出島に行きました。出島は日本が鎖国していた江戸時代に唯一ヨーロッパ文明との接点を持っていた場所です。ここにはオランダ東インド会社の商館員が滞在し貿易業務に携わっていました。往時は海の中に突き出した人工島でした。

出島は3,300�屐淵謄縫好魁璽�12面程度）の扇型で、今は復元工事が進んでいます。島の西端の一部にミニ出島が作られ、全体像が理解できるようになっています。中島川にかかる橋を渡れば出島で、再現された建物や街路を歩くことができます。

ここには常時20人から30人が滞在していました。オランダ人たちは原則として島から出ることはできず、たまに商談などで市街地に行くときも必ず役人が同行しました。ここに半年から場合によっては数年も滞在したといいます。
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◆春の夜
10日の夜は長崎ロープウェイで稲佐山に登り、展望台から夜景を楽しみました。長崎は湾の奥に開けた細長い街で、街路は山に駆け上がるように作られた坂の街です。世界新三大夜景に認定と誇らしく書かれています。

夜景の美しい街は山と海に挟まれているのが共通点です。函館、神戸もそうであり、長崎はその条件にぴったりです。展望台からは長崎湾と対岸の長崎中心街の夜景を眺められます。昼に来ても東シナ海に浮かぶ島々まで望める絶景でしょう。
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◆春の夕
ちゃんぽんは中国福建省の福建料理がベースといわれる長崎発祥の郷土料理です。野菜、魚介類、豚肉など十数種類の具材をラードで炒め、豚骨や鶏ガラスープで味を整え、ちゃんぽん用の麺を入れます。

JR長崎駅の「ちゃんぽん蘇州林」で本場の長崎ちゃんぽんを食べました。海老、豚肉、イカ、もやし、人参、白菜、きくらげなど多くの具が入り、スープの味が絶妙でした。
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◆春の街
長崎市では長崎電気軌道という路面電車が走っています。大正3年（1914）創業。市内の観光地を巡るには、路面電車かバスが便利です。美しく彩られた車体が市内を走っています。

桜はすっかり葉桜で、今はヤエザクラが咲いています。市内では外国人観光客、特に韓国人の姿をよく見かけました。長崎は島嶼部を除けば日本列島の西の端であり、韓国は目と鼻の先で、大阪より釜山の方が近いほどです。
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◆春の川
長崎市は長崎半島の付け根にあり、オランダや中国との貿易を目的に発展した歴史を持ちます。眼鏡橋は寛永11年（1634）にかけられた日本最古の石橋です。中島川にかかる多くの石橋のうち唯一二連のアーチ状をとっています。

原爆は当初眼鏡橋から二本下流側にかかっている常盤橋を投下目標にしていたそうです。しかし雲がかかって目視できず投下に至りませんでした。もしここに投下されていたら、眼鏡橋はもちろん、大浦天主堂、グラバー園なども壊滅的な打撃を受けたことでしょう。

原爆ファットマンを搭載したB29ボックスカーのこの日の最初の投下目標は小倉でした。しかし、前日の八幡市の空襲の煙霧が視界を遮り投下できませんでした。もし、この煙霧がなかったら第二の被爆地はコクラでした。運命といってしまえばそれまでですが…。
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◆四月
唐寺とは華僑が自分たちのために建てたお寺で、「媽祖」と呼ばれる海の安全を守る神様が祀られているのが特徴です。長崎は古くから中国の影響が強く、崇福寺、興福寺、福済寺は「長崎三福寺」と呼ばれています。

今回は崇福寺へ参拝しました。建物全体が弁柄色をしており、門は竜宮城を連想させます。
福州の唐人が1629年に唐僧超然を招いて建てました。想像していたよりもずっと大きなお寺で保存状態もよく驚きました。

それもそのはず、建物のうち「第一峰門」と「大雄宝殿」は国宝に指定されています。原爆の投下地点からは3kmほど離れた南の山の斜面に建っていたため被災を免れたのでしょう。
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◆春うらら
この日はよく晴れて歩いていると少し汗ばんでくるような天気でした。浦上天主堂は爆心地に近く原爆でほぼ全壊。しかし側壁は倒壊を免れました。保存されていれば広島の原爆ドームと並ぶ貴重な被爆遺構になったはずです。残せなかったのはなぜでしょうか。

長崎の被爆シンボルとして映像に登場することが多い平和祈念像は個人の製作物です。その日の記憶を凍結させて後世に伝える原爆ドームのような力は持ちえません。

浦上天主堂内で被爆マリア像を見ました。堂内に安置されていた木製のマリア像の顔の首から上だけが焼け残ったものです。今、これを世界遺産にという運動があるとか。今更遅いですが、天主堂の遺構そのものを残していれば比較にならないほどの力を持ったでしょう。
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◆晩春
長崎へ着きホテルに荷物を預けた後、平和公園へ行きました。平和公園を訪れるのは二度目です。平和公園に入ると円形の平和の泉があり、両側に噴水があります。そこを抜けていくと、毎年追悼式典がおこなわれる広場に出ます。

ヒラドツツジが満開でした。平和祈念像の前の黒大理石の上を絶えることなく水が流れ落ちています。原爆で瀕死の大やけどを負い水を求めて亡くなった犠牲者の霊を慰めるため、慰霊空間ではいずれも水が重要な役割を果たしています。
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