一ノ谷の合戦でよく知られているのは平敦盛です。敦盛は清盛の弟である経盛の末子、沖の船に逃れようと汀に馬を乗り入れていたところ、背後から熊谷直実に「敵に背中を向けて逃げるとは卑怯」と呼び止められます。

その場面が須磨寺の境内に銅像になって残されています。この後、敦盛は引き返し直実と組み合って馬上から落とされます。首を切ろうと直実が兜を押し上げると、自分の息子と同じ年頃の美しい少年です。敦盛は15歳でした。

なんとか命を助けられないかと直実は思いますが、背後に味方の軍勢が迫っています。泣く泣く首を落とした直実は、武家に生まれたものの身の辛さを嘆きます。敦盛は腰に笛を携えており、昨夜戦場に響いていた笛はこの人のものであったか、と直実は悟ります。
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