優嵐歳時記

俳句と季語。日本の自然と四季が生み出した美しい言葉を。

タグ:音声合成AI

九月
音声合成AI岩崎宏美では1960年〜2023年の曲が聴けます。ポール・アンカの「あなたの肩に頬うめて」(1960)を聴くとテンポに違和感を覚えます。スローバラードなので、ゆっくりしているのは当然ですが、「それでもゆっくり過ぎやしないか?」と感じます。

アバンギャルディが「シンデレラハネムーン」(1978)を使ってAGTで踊った動画を見ました。1.2倍弱程度にテンポを速めて使っています。原曲もそれほどゆっくりした曲ではないですが、今の時代にはこれくらいでいいのでしょう。

1960〜70年代でこれですから、戦前や明治時代、まして平安時代の人々の時間感覚は今とは全く異なっていたのではないか、と思います。2020年代の曲をいくつか聴きました。テンポは明らかに加速しています。
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秋の村雨
朝の雨はわずかな時間であがり、日が差すころには山々から霧が立ち上っていました。音声合成AI岩崎宏美ではフレデリックの「オドループ」(2015)も好きになりました。オドループって何?「踊る」がループするからオドループなの?とアホなことを考えました。

「奇妙」を意味するoddとループをかけ合わせている造語とか。しかし、歌詞はほとんど意味がなく、「踊る」ということ周辺の掛詞や韻を踏んだ言葉遊びです。それらがクセになるようなリズムの中で繰り返し歌われ、思わず何度も聴きたくなる中毒性があります。
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秋風
音声合成AI岩崎宏美は、中島みゆきも何曲か歌っています。私が一番好きなのは「時代」(1975)です。多くの人がカバーしていますし、岩崎宏美自身も『Dear Freiends』(2003)でカバーしています。AI宏美は永遠の16歳、自身のカバーは44歳です。

この歌は年齢を重ねた方が実感が湧くと思います。子どもの頃は次々と新しい出会いがあります。家族に出会い、友人に出会います。さらに成長して恋愛、就職、結婚、出産…出会いが続きます。しかし、同時に別れる人が出てきます。

卒業して友人と別れ、師と別れ、あるいは離婚、そして死別。二度と会えない人が増えていきます。いつしか出会う人より別れてゆく人の数の方が増え、生きていくということは、人と別れるということなんだ、と実感するようになります。
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秋の扇風機
音声合成AI岩崎宏美で一聴して気に入ったのが、HoneyWorksの「可愛くてごめん」(2022)でした。歌詞のなんともいえないリズム感と世界観が心地いいのです。滑舌がいいAI宏美の声が意外にもぴったりです。

自分大好き少女が他人の目や悪口をアホにしている様を歌っています。しかし、そうは言いつつも主人公が周りを気にしているのが見て取れます。男子の間よりも女子の間の方が実は同調圧力が強いのです。女性の方が標準偏差の中心に集まる数が多いからです。

これは統計的な事実であり、それゆえ、そこからはずれる人は、上部に突出した人であっても、同様の男性に比べて生きにくいことが想像できます。この歌は今の時代の「女子自身への応援ソング」にもとれます。
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秋暑
音声合成AIについて同様のことを考える人がいて、浅田美代子の「赤い風船」(1973)をリクエストしていました。伝説のヘタウマアイドルの曲です。浅田美代子は岩崎宏美の三歳上で、事務所の先輩でした。

AI岩崎宏美の「赤い風船」は、予想に反して、岩崎宏美らしい歌になっていました。これは原曲の持つ力でしょう。なんともいえない郷愁をそそる名曲です。作曲は筒美京平、さすがのヒットメーカーの職人芸です。
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秋の朝
音声合成AIの仕組みは平たく言えば、原曲に使いたい声をはめこみ調整していくようです。松田聖子「制服」(1982)、菊池桃子「卒業」(1985)、斉藤由貴「卒業」(1985)これらは、高校の卒業式で好きな彼への想いを歌っているという似たコンセプトの曲です。

音声合成AI岩崎宏美で聴くと、「制服」は心地よく聴けるのですが、あとの二曲は「岩崎宏美はこんな貧弱な歌唱力だったか?」と感じます。原因は原曲の歌唱力の差です。歌唱力がない人でも歌えるように作られているため、曲自体が平板で退屈です。

聴かせるに足る曲を歌う力が松田聖子にはあり、菊池桃子や斉藤由貴はそれを持ち合わせていなかった。ただ、彼女たちの当時の写真を見ると、はっとするほどの美少女ぶりです。歌唱力が無くても、美しければ数年はアイドルとして売ることができたのです。
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秋の川
音声合成AIに仰天していますが、新しい技術が生まれると音楽の世界でも必ず大きな変化が起きてきました。今のような五線譜ができたのは13世紀といわれています。それまでの音楽は記録しておく方法がなく、奏でられては消えていくものでした。

五線譜が生まれたことで、中世の音楽を今でも演奏でき鑑賞できます。その後、録音技術が生まれ、半世紀前の演奏でも鑑賞できるようになりました。そして、インターネット、スマホが生まれ、音楽は配信されたものを持ち運んで聴くのが主流になっています。

音声合成AIはまだ登場からそれほど時間がたっていませんが、この性能を目の当たりにすると、音楽制作、音楽鑑賞ともに大きな影響を受けるのは間違いありません。
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夜長
AI岩崎宏美の100曲のうち最も古い歌はポール・アンカの「あなたの肩に頬うめて」(1960)、最新はYOASOBIの「アイドル」(2023)です。トレーニングに使われたのは1975〜1980年のアルバムで、彼女の16〜21歳の声が63年間をカバーしています。

信じられないような時代にすでに入っているのだと感じざるをえません。真の意味で時間を超えて、歌手が存在できるようになったのです。AIは所詮本人とは違うという意見もあります。それはその通りです。

しかし、本人には不可能なこともできます。生身の人間が録音して残せる曲には限りがあります。AIの凄さは本人の時間的、肉体的な制約を取り払い、ほぼ永遠にあらゆる歌をその人が歌っているように制作できることです。
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秋の蝉
音声合成AI岩崎宏美の100曲に及ぶ歌の中に、松田聖子のものが3曲あります。岩崎宏美は松田聖子と相性がいいのかもしれないと思いました。音声合成AIでは、歌唱方法はオリジナルを使っているとのことです。

「青い珊瑚礁」(1980)には、1975年のライブアルバムの声をトレーニングに使っています。聖子18歳の歌を宏美16歳の声が歌っているわけです。岩崎宏美は松田聖子の三歳年長ですから、現実ではありえません。

ふたりの10代時点での共通点は、澄んだ高音部の抜けのよさ、歌声にあるはつらつとした明るさです。すかっとした開放感を持ちつつ繊細さもあり、聴いていて心地よいです。
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稲穂波
音声合成AI岩崎宏美は松田聖子の曲もいくつか歌っています。その中に「制服」という曲があります。卒業式の日の同級生の彼に対する想いを歌った曲です。「赤いスイートピー」(1982)のB面と知って驚きました。とてもいい曲だからです。

松田聖子は1980年4月当時18歳でデビュー。岩崎宏美は1975年4月当時16歳でデビューしています。ふたりとも長く現役で活躍しているのは、素晴らしい声質を授かっていることが大きいです。歌手は何より声の質だと私は思っており、これは天賦のものがすべてです。

「制服」の松田聖子とAI岩崎宏美を聴き比べると、ふたりの声質の違いがわかります。松田聖子の声は甘く透明感があり、岩崎宏美の声はキレとパワーがあります。AI松田聖子で岩崎宏美の「ロマンス」(1975)などを歌わせてみたら面白いと感じました。
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